うちの組合員がモンスターペアレントから難癖をつけられ謝罪を求められました。組合員は校長からも謝罪を求められ、悪くもないのに謝罪しました。組合としてはこの件に関し、やはり釈然としなかったわけです。自分の法的な感覚からしても、労働法的概念からの切り口がどこかにあると思っていましたが、言語化することがなかなかできませんでした。何度もブログに書きは消しを繰り返していたほど、このモンペ対策に関する組合的解釈は未開だった訳です。前回のブログにも書きましたが、モンスターペアレントからのクレームは校長という身分だからごめーんちゃいで逃げ切れるわけですが(校長は保護者に謝罪で逃げると、矛先は担任に降りてくる)、自分たちのような担任はこの1年間はモンペと対峙しなければなりませんので、安易な謝罪は逆効果で、舐められるだけです。
概念としては、カスタマーハラスメントに対する対応になります。2018年の保護者とのトラブルを巡り、校長が教諭に謝罪させた判例です。結果からいきましょう。
Aさんの意に沿わず、何ら理由のない謝罪を強いたとして、「専らその場を穏便に収めるための安易な行動」と評価し、不法行為(違法なパワハラ)と認定しました(甲府地裁2018年11月13日判決)
ということで、
校長が教員に悪くもないのに謝らせたりしたら、判例付きのパワハラ決定です。
保護者が難癖をつけ謝罪を求める行為は、判例付きのカスハラ決定です。
校長は安全配慮義務(従業員が心身の健康を損なわないよう注意する義務)違反決定です。
とりあえず、謝っとけみたいな指示を教員に出すこと自体、ハラスメントなんですよ。
企業がカスハラを受けた従業員からの相談を受け付けずに放置したり、現場の従業員任せにして、問題のある顧客の対応を一人だけに押し付けたりすることも安全配慮義務違反となります。
当然、教員にも類推適用できるので、
1、モンスターペアレントからカスハラを受けた教員からの相談を受け付けずに放置した場合も、校長の安全配慮義務違反
2、担任の教員任せにして、問題のあるモンスターペアレントの対応を一人だけに押し付けたりする場合も、校長の安全配慮義務違反
です。ようするに、
校長がモンペ対応から逃げるのは、安全配慮義務違反!
今回は、マジで使えると思いますよっ。( ^∀^)この管理職が逃げるという実態はやはりおかしいと思ってきたし、誰か現場が生贄になればいい的な発想もやはり同様におかしいと思ってきた訳です。校長がカスハラ対応をすればよく、理由は校長には労働法上の安全配慮義務が課せられているから。
昨年モンペにやられ悩まれていた先生がいらっしゃいましたが、これをお伝えできれば力になれたのかもしれません。新天地でまったりとのんびりとお仕事されていることを願っています。
ラストに一緒に唱えましょう!
校長がモンペ対応から逃げるのは、安全配慮義務違反!
さぁご一緒に!カモーン。
校長がモンペ対応から逃げるのは、安全配慮義務違反!
オウイェー!レッツゴー。
校長がモンペ対応から逃げるのは、安全配慮義務違反!
モンペ対応(=カスハラ)は管理職に振るしかないわけですよ。こちらが馬鹿みたいに校長を守る必要もないどころか、むしろ逆で僕らは校長に守ってもらう方なんです。校長を盾にして、いっそのことモンペに言いたい放題言ってやろうじゃありませんか。笑
最後に、ここまで概念化ができれば、地公法第46条の措置要求も可能と言えると思います。措置要求の内容として① 給与、勤務時間、休憩、休日及び休暇に関する事項、② 労働に関する安全及び衛生に関する事項、③ 執務環境、福利厚生等に関する事項が挙げられますが、校長のモンペ対策への不作為は②に該当すると思うので、校長が私たちを守らなかったら措置要求をするぞと言えば話は早いです。今までなぜか教員が殿様である校長を守らなければならないという雰囲気や気遣いが暗黙のうちに求められてきていましたが、実は逆で、校長が私たちをモンペから守らなければならなかったのです。
(参考)
公立小学校に勤務していたA教諭は、自身が担任する児童の家を訪問した際、児童の飼い犬に脚をかまれ、加療約2週間のけがを負いました。法的には、A教諭は、児童の家庭に対し、治療費などの損害賠償を求めることができます。しかし、A教諭は治療費の支払いを申し出た児童の父母に対し、「お気持ちだけで十分です」と辞退しました。なお、A教諭は、児童の母に対し、ペット賠償責任の保険に加入しているか確認し、入っていないことが分かると、今後同じような事故が起きた場合の備えとして、児童の母方の祖父が保険に詳しいと思ったことから、そうした保険について「ご相談なさってみてはいかがでしょうか」などと話しました。その翌日、児童の父から学校に連絡があり、「昨夜、補償不要で話は収まったが、Aはまだ補償を求めている。校長を交え、Aと話がしたい」と言われました。児童の父と祖父、B校長とA教諭が集まった面談の席で、祖父は、「地域の人に教師が損害賠償を求めるとは何事か」などと言って、A教諭を非難し、「強い言葉を娘(児童の母)に言ったことを謝ってほしい」などとして謝罪を求め、父も同調しました。B校長は、A教諭の児童の母に対する発言に行き過ぎた言葉があったとして、A教諭に対し、その場で、児童の父と祖父に謝罪するよう求め、A教諭は床に膝をつき、頭を下げて謝罪しました。児童の父と祖父が帰った後、B校長は、明日の朝、児童の母にも謝罪しにいくよう指示しました。その後、A教諭は、B校長からパワハラを受けたせいでうつ病に罹患し、休業することになったとして、市や県に対して損害賠償請求訴訟を提起しました。
(判決)
裁判所は、B校長がA教諭に対し謝罪するよう求めた行為について、
- A教諭には非難すべき点がないにもかかわらず、A教諭を一方的に非難し、
- 児童の父と祖父からの謝罪要求が理不尽なものであったのに、その場で謝罪するよう求め、
- Aさんの意に沿わず、何ら理由のない謝罪を強いた
として、「専らその場を穏便に収めるための安易な行動」と評価し、不法行為(違法なパワハラ)と認定しました(甲府地裁2018年11月13日判決)
本件のように、怒っている顧客や取引先を目の前にして、その場を丸く収めるために、上司が部下に対し、不合理な謝罪などを命じる場合、「カスハラ」がきっかけで、新たな「パワハラ」問題に発展してしまいます。上司の指示や指導が、違法なパワハラに当たる場合、企業はパワハラ上司の使用者として、法的責任を追及されることがあります。また、企業がカスハラを受けた従業員からの相談を受け付けずに放置したり、現場の従業員任せにして、問題のある顧客の対応を一人だけに押し付けたりすると、従業員は過度のストレスにさらされ、心身の健康を害する危険があります。そうなれば、会社は、従業員が心身の健康を損なわないよう注意する義務(安全配慮義務)に違反したとして、訴えられる可能性があります。
IT mediaさんからです。
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